4．資格の認定
　　バイオダイナミック農法の葡萄栽培として認定する機関としては、ドイツに本部のある”Ｄｅｍｅｔｅｒ”があります。フランス支部が認定を行なっていますが、この認定はかなり弾力的です。バイオダイナミック・カレンダーに従わなくても、バイオダイナミック・プレパレーションをその敷地内で、かなりの部分実践していれば、認められるようです。たとえそれを使わなくとも？
　　そうなると、普通の有機農業との差は極めて微妙になります。ボルドー･ミックスのような農薬の使用も量は少ないといいますが、完全には止めていません。

5.ブルゴーニュで適用している主な作り手
　　Ｄｏｍａｉｎｅ　Comte Armand
　　Ｄｏｍａｉｎｅ　Ｇｉｂｏｕｌｏｔ
　　Ｄｏｍａｉｎｅ　Ｇｕｙｏｔ　Ｐｅｒｅ　＆　Ｆｉｌｓ
　　Ｄｏｍａｎｅ　Ｊｅａｎｄａｕ
　　Ｄｏｍａｉｎｅ　ｄｅｓ　Ｃｏｍｔｅｓ　Ｌａｆｏｎ
　　Ｄｏｍａｉｎｅ　Ｌａｆｌａｉｖｅ
　　Ｄｏｍａｉｎｅ　Ｌｅｒｏｙ
　　Ｃｈａｔｅａｕ　ｄｅ　Ｍｏｎｔｈｅｌｉｅ
　　Ｄｏｍａｎｅ　Ｒｏｓｓｉｇｎｏｌ－Ｔｒａｐｅｔ
　　Ｄｏｍａｉｎｅ　ｄｅｌａ　Ｖｏｕｇｅｒａｉｅ

1．ワインにおけるバイオダイナミズム
　　スタイナーは1925年に死亡しましたが、実践する農家や信奉者が継承発展させていきました。ナチスによる弾圧で信奉者が亡命したことにより、運動は英米等ドイツ･オーストリア以外の国へも広がりました。
　　この運動は「バイオダイナミック･プリパレーション」と呼ばれる一種の堆肥及び散布液を使うことと、農作業を星や月の運行のサイクルに合わせて行うものですが、基本的には一種の有機農法と言えます。
　　ワイン農家が関心を持ったのは、第2時世界大戦後の化学肥料や農薬の過度の使用により、テロワーの個性が無くなりつつあるとの危機感から、堆肥によるテロワーの独自性発揮の可能性に着目したからです。

バイオダイナミズムは1861年スロベニア生まれの哲学者、ルドルフ・スタイナー（Ｒｕｄｏｌｆ　Ｓｔｅｉｎｅｒ）により提唱されたものです。:ゲーテの研究者として知られていましたが、ゲーテの現象哲学をを独自に発展させ、1894年に独自の唯心論”Ａｎｔｈｒｏｐｏｓｏｐｈｙ”を発表しました。彼はこれを、「人間の精神を宇宙の精神に導く知識の道」と定義しています。
1921年にＤｏｒｎａｃｈに研究所を創設し、生命に作用する力に関する研究を進め、薬品、治療法、農業等への適用を試みました。その流れのなかで、Ｋｏｗｅｒｗｉｔｚにおいて農夫と地主に対し｢農業の再生のための精神的基礎」とよばれる8回の講義を行いました。バイオダイナミズム運動はここから始まりました。
スタイナーの考えでは、地上の生命は全て宇宙て起きていることの反映であるというものです。このことから、農作業のサイクルを宇宙の運行に合わせるべきとの考えに発展して行きました。

2．バイオダイナミック･プレパレーションについて
　　葡萄の剪定屑、落ち葉、絞りかす、野菜屑、草木のチップに牛糞を混ぜ堆肥を作りますが、それに6種の｢バイオダイナミック・コンポスト・プレパレーション」を1㎥当り小匙1杯程度加えます。この辺りになってくると、科学的素養が邪魔してなかなか理解しがたいのですか、堆肥の中の微生物は宇宙のエネルギーを植物に伝える媒介作用をするのだそうですが、このプレパレーションが微生物の働きを活発化させると言います。そのために奇妙な儀式と理屈付けがなされています。一つだけ詳しく説明します。
　　ノコギリソウの花を集め、雄鹿の膀胱に入れ、土に埋め、6ヶ月後に掘り出します。ノコギリソウは燐とセレニゥムに富み、金星と関係があり、植物の硫黄分の代謝と成長に必要な希少金属の集積に貢献すると信じてられています。鹿の膀胱を通して、宇宙のエネルギーを集積すると言います。ノコギリソウの花の収穫は太陽が獅子座の領域にある8月11日から9月１４日の間に行うとか。とか言うように、これ以外は牛の小腸につめたカモミールの花、泥炭で囲った穴に入れたイラクサ、羊の頭蓋骨にいれた樫の樹皮、腸間膜に包んだタンポポ、すり潰したカノコソウの水溶液なのです。カノコソウの水溶液は堆肥に散布します。
　　その他に散布剤として、次の成分の水溶液があります。牛の骨に牛の糞を詰めて土に埋めたもの、牛の角に石英の粉を詰めて土に埋めたもの、乾燥したスギナの煮汁です。　　

3.ハイオダイナミック・カレンダー
　　植物の発芽、成長、結実などのプロセスは宇宙のエネルギーの反映であると信じられています。月、太陽、惑星、恒星（星座）と地球の位置関係（地球から見た）によりそれぞれのエネルギーの相対的な影響力が異なることから、植物の成長過程や病害虫の発生に影響すると言うものです。この意味では天動説であり、占星術と相通ずるものがあります。
　　このカレンダーに従って、剪定や、堆肥や散布剤の散布、除草、耕運、摘果などの農作業を行うべしという事になっています。

　　この中、Ｄｅｍｅｔｅｒの認定を受けているのは、ルロワだけです。そして積極的にバイオダイナミック・ワインであることをＰＲしているのは、ルロワとラフレーブだけでしょう。この2つのドメーヌがいずれも女性経営者だということは興味深いことです。
　またこの中の多くはオーガニック･ワインの認定であるＥｃｏｃｅｒｔは受けています。この他にもＤＲＣはじめ、バイオダイナミックのテストをしている有力ドメーヌも数多くありますが、この思想のエキセントリックさにより、市場の評価を落とすことを警戒してか、公表していません。
　　しかしながら、堆肥の投入により畑の微生物が増えることは事実であり、テロワーの独自性を主張したい作り手にとって、バイオダイナミズム風の栽培は、今やブルゴーニュの一つのファッションになっています。