この制度は1906年にＩＮＡＯ（Ｉｎｓｔｉｔｕｉ Ｎａｔｉｏｎａｌ ｄｅｓ Ａｐｐｒｌｌａｔｉｏｎ ｄ‘Ｏｒｉｇｉｎｅ）により定められました。これは従来から行われていた格付けを踏襲しものです。中世のフランス中南部からドイツのワイン作りはシトー派またはベネディクト派の修道院によって担われていました。多数の断層と侵食により形成された複雑な土壌条件の畑では、葡萄の収穫した畑により出来上がったワインが微妙に違うことに人々は気が付いていました。敬虔な修道士たちはこれは神の思し召しと考えていました。特定の土地は別と土地によって取って代われることはないというこの信念はフランス革命後も継承されました。
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（Ｔｈｅ Ｗｏｒｌｄ Ａｔｌａｓ ｏｆ Ｗｉｎｅ ｂｙ Ｈｕｇｈ Ｊｏｈｎｓｏｎ）
カリホルニアのワインは1987年にアルコールー麻薬―武器局(AFT)により行政区画名を名前につけることが認められました。その後1980年にAmerican Viticultural
Areas(AVA)が創設され、ナパ・バレー、ソノマ・バレーなど明確な地形的区画のある地域の名称を制定しました。
これらの法的なアペラシオン・ネームを使うためには、ワインの元になった葡萄の85%がその地域から産出していればよいという緩やかなものでした。アメリカのワイン産業の特徴は大規模な葡萄栽培農家が、複数の大小の醸造家に供給するというフランスのネｺﾞｼｱﾝ・システムの反対の形を取っていることです。(サンタバーバラのワイン事情をご参照下さい)
単一の畑からの単一の品種の葡萄だけから作ったワインということは、ある意味では分かりやすいと言えます。知識のあるワイン通はラベルをみれば、その謎解きができます。
テロワーの独自性を維持するため、葡萄液の希薄化を防ぐため最大収量の制限があり、クリュの畑では潅水すらも禁止されています。大雨で押し流された表土を元に戻すことは認められていますが、客土をすることは禁止されています。さすがに肥料の制限はなくなりましたが、有機栽培への志向が一般的です。栽培や醸造の技術が進歩し、作り手は各種の操作を加え理想と考えるワインを作り出そうとします。しかしそれでも、作り手のワインの独自性が、テロワーの独自性を覆い隠さないように注意します。
更にワインの生産はアペラシオンの地名内で行なわれる必要はありませんから、高品質の葡萄か産出されるとのイメージのあるナパ・バレーのような名前をこぞって名乗ることになります。現にナパの名前の付いたワインの50%は地域外で作られているそうです。また命名法を無視して勝手に良質の葡萄の産地のイメージを連想させる名前をつけることも横行しています。産地の名前と葡萄の品種という分かりやすい表示の導入をめざしましたが、結果的に何がなんだか分からない状態を招来しています。
これがロバート・パーカー等の点数法による評価システムがアメリカで大きな支持を得ている一つの理由でありましょう。
ボルドーではカベルネ・スービニョンとメルローが主要品種ですが、それに加えいくつかの品種のブレンド割合を調整することにより、ブランドの毎年の品質を均質になるように工夫しています。したがってビンテイジによるばらつきは少ないですが、広い範囲の畑からのブレンドですから、テロワーの特質ははっきりしませんし、生産工程における各種の操作も頻繁です。
格付けは1st.growthから5th growsの5段階に分けられ、これがブルゴーニュのクリュに対応します。1st。グロースには当初、Lafite,Marggaux,Latour,Hout-Brionの4つでしたが、100年後にMouton-Roschaildが追加されました。
S.ランドンとスミスは品質と価格の調査で、ランク付けにおける影響度は価格の要素が現在の品質の要素の20倍もあるといっています。
ボルドーの格付け制度はまったく別のシステムです。これはシャトー・システムに基づいています。1855年にパリ万国博にフランス文化のエリート・システムを誇示したいというにナポレオン3世の要請により定められました。ワイン業界のブローカーたちによって、過去100年間の取引価格とシャトーの評判に基づいて定められました。これはブルゴーニュのテロワーに基づく格付けとは全く異なります。シャトーは広い葡萄畑を管理する経営体で、通常醸造施設と熟成のためのセラーのストック・スペースを備えています。ブルゴーニュで言えば、ドメーヌと兼業のネゴシアン、例えば、ジャド、フェブリー、パトリアッシュ、ボアセットと似た存在と考えればよいと思います。通常オーナーは域外の億万長者の不在地主で、そこのワインの品質はmaître de chaiの役割が重要です。何代にもわたって世襲により技術が継承されてきているといわれています。
ブルゴーニュのワインの格付け制度はテロワーに基づきグラン・クリュから地域ワインまでのランク付けがされています。この制度をボルドーや他国の制度と比較してみましょう。