マロラクティック発酵(Malolactic Fermentation-MLF)が一般的に行われるようになったのは割りに最近のことです。自然に発酵することは知られていましたが、培養したバクテリアを接種するようになったのは2－30年前からです。いまでは高級ワインのほとんどと白ワインの一部で行われています。
MLFバクテリアは葡萄糖などの糖類と有機酸に住みついていますが、リンゴ酸を乳酸に変換する働きをします。
HOOC-CH2-CHOH-COOH→CH3-CHOH-COOH+CO2
MLFによる適量酸性度(titratable acidity)の低下は1-3g/Lです。これは酸度の高いワインを和らげるのに非常に重要です。また同時にいくつかの代謝産物を生み出します。これはワインの質を高めたり、低下させたりします。代表的なものはジアセチルです。
1.MLFに影響する要素
① 温度：15ﾟC以下ではマロラクティック・バクテリアの成長は止まります。20ﾟC-25ﾟC
が最適温度です。
② PH：PH=3.0-3.3の低PHでは活動できません。PH=3.6以上ではよく成長し、大量のジアセチルや酢酸を製造しワインをスポイルします。
③ PHによるMLFの終了に要する期間の差
④ MLFによる適量酸性度の低下の状態は下図の通り。
Initial mustTAは発酵前の果汁、Control wineTAはアルコール発酵のみのワイン、 MLF wineTAはMLF後のワインを示す。アルコール発酵による低下は平均0.07%、MLFによる低下は0.15%(PH値で0.15-0.2の上昇)
⑤ 二酸化硫黄：(SO2)は効果的なMLF抑制剤です。
⑥ 養分：アルコール発酵後の早期のラッキングによりオリを除去してしまうと、バクテリアの繁
殖に必要な栄養が不足して、MLFが繁殖するのを妨げます
⑦ 抑止剤－フマル酸が効果的な抑止剤となります。特に低PH状態において
2.MLFの便益
① 特に寒冷地の酸性度の高いワインではその低下が必要です。MFLにより適量酸性度が1－3g/L低下し、PHでは０．１－０３ポイント低下します。
② MLFにより香りの変化が期待されます。構成要素の変化が生じます。乳酸の増加の他に、副産物としてジアセチル、アセトン、ブタンジオールや揮発性のエステルが作られ、香りが複雑化します。
③ 微生物に対する安定性-ワイン製造のプロセスの間にNLFを行わせることにより、壜詰後に予期せぬバクテリアの繁殖を防げます。