シャブリのクリマ

コート・ドールから北へ100ｋｍほど行ったセラン（Ｓｅｒｅｉｎ）川のほとりにシャブリの村があります。セラン川は西に向かって流れ、セーヌ川と合流し、パリへ通じています。この水運の便が首都の大市場に大量のワインを供給することを可能にしていました。１９世紀の終わりには２万ｈａの葡萄畑（コート・ドール全体の倍の広さ！）がありました。シャブリはシャルドネーの白ワインの代名詞にまでなりました。しかしフィロクセラと２度の大戦により疲弊し、４５年には500ｈａにまで減っていました。しかしその後急速に復旧し、２０００年には4,755ｈａ、２００３年には指定地域は6.700ｈａとコート・ド・ボーヌを上回るほどにまで拡大しました。

それに次ぐのが、ビヨー・シモン(Domaine Billaud-Simon)、バンサン・ドービサン(Domaine Vincent Dauvissant)、ベヌワ・ドルワ(Domaine Benoit Droin)、ウイリアム・フェブル(Domaine William Févre)、リン＆ジーン・ベルナール・マルチーブ(Domine des Malandes Lyne and Jean-Bernard Marchive)、クリスティアン・モロー　ペレ　エ　フイス(Domaine Christian Moreau Père et Fils)、ジェラール・トレンブレイ(Domaine des iles Gérard Tremblay)などです。

ボーヌのネゴシアンの多くもこのワインを扱っていますが、その中ではドルーアンとジャドものが良いと言われています。

シャブリの生産量の1/3はシャブリジェンヌ(La Chablisienne)という協同組合によります。多くのグラン・クリュやプレミア･クリュのラインアップがありますが、見るべきものはありません。最有力の作りは手はラベノー(Domaine Ravenneau)でしょう。クロ、ブランショット、バルミュールのグラン・クリュといくつかのプレミア・クリュをすべて手摘み取りで収穫しています。それぞれの畑のテロワーの違いをよく表現したワインです。

シャブリ･ワインには失望することが往々にしてあります。その理由をクリーブ・コートはいくつか挙げています。シャブリの95%の葡萄は機械摘み取りによるため低品質の葡萄を除けることができない。全体に収量が多すぎる。グラン・クリュでもコート・ドールの村名ワイン並みの52hl/haで44hl/haの30%増しである。畑が急拡大したため25年以下の若い樹か主体で、本来の味わいを出せていない。低品質をカバーするために操作をしすぎで、ワインの寿命を縮めている。すなわち澱の微少成分をワインの溶け込ませるために過剰なバトナージュをするため、酸化が進んでしまう、などです。

シャブリは葡萄の栽培の北限にあるため、常に霜害や成熟不足のリスクにさらされています。そのワインはコート・ドールの白ワインとはまったく異なったワインです。良いシャブリはある意味では濃厚で粘度かあり、はっきりした緑を帯びた金色をしています。火打石や炒ったナッツの香りがするといわれています。後味は濃厚で後を引きます。華やかではありませんが、奥行きの深いワインです。他の地域のワインと大きく異なるのは、樽の樫の香りがシャブリらしさを殺すということです。熟成方法について2派があります。1派は樽を使わずステンレス・タンクだけで熟成されるグループです。樽を使う派でも古い樽しか使わないとか、最小限や不作年に限るなどして、樫の香りを極力避けようとしています。

村名ワイン・シャブリの畑は3,163haあり、78年以来350%拡大しています。プチ・シャブリからの編入はそのうち300haに上ります。プチ・シャブリは新規の開墾により700haの水準を維持しています。

775haの広さのプレミア・クリュの畑があります。これは1978,年よりも70%増です。78年に26あったリュゥディット(lieux-dites)を11のプレミア・クリュ・クリマ名に統合しました。その後86年に更に8つの地域を統合し、現在37のリュウディットがあります。ラベルにはブレミアクリュ名をつかってもリュウディット名のいずれを使ってもかまわないことになっていますが、一般的には17のリュウディットしか使われていません。

シャブリには7つのグラン・クリュがあり、合計104ｈａの広さを誇ります。いずれもセラン川の右岸にありシャブリの町に面した南西斜面にあります。西からＢｒｏｕｇｒｏｓ，Ｌｅｓ　Ｐｒｅｕｓｅｓ，Ｖａｕｄéｓｉｒ，Ｇｒｅｎｏｕｉｌｌｅｓ，Ｖａｌｍｉｒ，Ｌｅｓ　Ｃｌｏｓ，Ｂｌａｎｃｈｏｔと並んでいます。この中でレ・クロが最良のグラン・クリュと考えられています。もっとも力強く、長持ちし、芳醇な味わいがあります。バルミュールとボーデジールがそれに次ぎます。プルューズとグレヌイュールはより薫り高く、華やかです。ブルグロとブランショットは少し劣ります。

当初、シャブリのＡＯＣはキンメルジアン石灰岩の地層に限られていました。１９７８年にこの制限を廃止したことにより、範囲は急速に拡大しました。この間グラン・クリュの畑は殆ど増えていませんので、いわゆるプレーン・シャブリといわれる村名ワインが増えたことが分かります。当初プチ・シャブリはシャブリより低いステータスと考えられ、新しくＡＯＣステータスを得ると、プチ・シャブリに分類されていましたが、シャブリへの編入を繰り返し、シャブリの面積が拡大しました。