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2.筋書きの中で重要な役割をはたした2本のワイン

リシュボー（Ｒｉｃｈｅｂｏｕｒｇ）：二人がレストランのウエイトレス兼ワイン栽培学の学生のマヤとテイスティング・ルームのスタッフのステファニーと首尾よくダブルデートに成功し、ステファニーの家のワイン・セラーで飲むワインを探す際に、さりげなく登場します。Ｄ．Ｒ．Ｃ．（ロマネコンティのドメーヌ）の最高級ワインで、趣味の良さを再認識させる役割を果たしています。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
サシカイア（Ｓａｓｓｉｃａｉａ）：主人公のマイルスが、まだ未練のある離婚した妻との記念日に飲もうと思ってとってあった61年物のイタリアワインです。彼女に再婚相手との間に妊娠したことを告げられ、やけになってハンバーガーショップへ持ち込み飲んでしまう場面があります。前妻への未練を断ち切って、マヤへ心が傾いていくのを象徴しているのでしょう。このワインはトスカナ地方の漁港、リボルノのやや南に位置する、テーブルワインの産地、ホルゲリー（Ｂｏｌｇｈｅｒｉ）のワインです。テーブル・ワイン（ＶＤＴ：Ｖｉｎｏ　ｄａ　Ｔａｂｏｌａ）はＤＯＣワイン（いわゆる産地認定された正規のワイン：フランスのＡＯＣに該当）より下のランクのワインです。1940年代に荒れはてていた桃と苺の畑にイタリアでは珍しいカベルネ・スービニオンを植えたところ、ＤＯＣ制度を震撼させるような素晴らしいワインができるようになり、70年代には世界的に有名になりました。監督のペインがこのワインの88年ものに個人的な思い入れがあり、登場させたようです。

4.この映画のワイン市場ヘのインパクト

この映画が公開された後、アメリカのピノ・ノワール市場は１６%拡大したそうです。特にピノ・ノワールのリピーターは40%も増加したそうです。新しいファンが増えたことが分かります。それに対し、マイルズの嫌いなメルローは3%減ったそうです。
しかし、それでもピノの市場シェアーは1.1%から1.4%に上がっただけで、主流になる道は遠いようです。

3.サンタバーバラのブルゴーニュ風ワインについて

アメリカ各地でピノ・ノワールが栽培されています。カリホルニアのナパ・バレーは海岸と平行した山脈が寒流からの寒気をさえぎるため、サンフランシスコ湾に近いソノマ地区を除き気候が暑すぎます。オレゴンも大規模に栽培されていますが、9月の収穫期の雨が作柄を不安定にしています。その他東部の各州でも散発的に栽培されていますが、このサンタバーバラ地区がもっとも成功した地域と言われています。

ここでは山脈が南北ではなく東西となっているため、北からの寒風をさえぎるとともに、海からの寒気が入りやすく、夏の気温が上がりにくい地形となっています。開花時期はナパよりも1ヶ月早いのですが、実の成熟は遅くなります。その結果、腰の確りしたフルーツの香りの高い、深みのあるワインが出来ます。

サンタバーバラはロスアンゼルスから車で、1時間半位のところにあります。

大きくサンタ・イネツ・バレーとサンタ・マリア・バレーの2つの産地に分かれます。その中ではイネツ・バレーの一番海に近い側ロムポック寄りの地域が、涼しく、ピノ・ノワールにもっとも適していると言われています。サンホードワイナリーが最高と言われる所以です。

1.この映画について

この映画は売れない小説家で、ワイン好きの主人公マイルスが、結婚を控えた三流俳優である大学のルームメイト、ジャックと独身最後の羽伸ばしにサンタバーバラのワイン産地へワイン・テイスティングとゴルフ旅行へ出かける1週間の物語です。

物語お定まりの男と女のお話ですが、全体の半分くらいの時間がワインを飲んでいるシーンです。ピノ・ノワール好きの主人公マイルズは友人ジャックををピノ好きに改造しようとして、ワインやテイスティングの仕方を教育しますが、それよりも女に関心の高いジャックにふりまわされます。

この映画はアカデミー賞の候補になったほどの完成度の高い映画ですが、随所にワインの含蓄に関する鋭い会話が散りばめられており、ワイン好きには思わずにやりとさせられる様な映画です。

実在のワイナリーのテイスティング・ルームやレストランがふんだんに登場しますから、地域の観光ガイドとしても役立ちますし、試飲した後のそのワインに対する評価の指摘も驚くほど的確です。

アンドリュー・マリーのワインに「アルコール度数が高すぎるため、フルーツの香りが負けている。」などと言わせて、カリフオルニァ・ピノ・ノワールの最大の弱点を鋭く指摘しています。

監督のアレキサンダー・ペイン（Ａｌｅｘａｎｄｅｒ　Ｐａｙｎｅ）は43歳の若手だそうですが、自身もワイン好きで、「この映画の中で。ワインに付いて語たられていることの95％は真実である。」と言い切っています。